間宮兄弟(2006)を見て思ったこと

「間宮兄弟」という映画を観ました。ので先日の記事にひとこと感想を書いていたんですが長くなったので別記事として独立させました。原作の小説は未読なのですがご了承ください。

オタク(秋葉原)ブーム

「間宮兄弟」の原作が連載されたのが2003〜2004年ごろで、映画化は2006年です。
2ちゃんねるから始まったムーブメント「電車男」の書籍化が2004年、映画化が2006年

石田衣良の「アキハバラ@DEEP」2002〜2004連載で映画化は2006年

つまりこの頃ってオタクとか秋葉原に世間の注目が集まった時期だったんだと思います。
映画じゃないですがperfumeの「アキハバラブ」2005年ですね。

2002年ごろからじわじわと火がつき、「萌え」というワードが流行語大賞トップ10入りした2005年ぐらいから秋葉原通り魔事件が起こる2008年ぐらいまでがピークだったんじゃないでしょうか。

「間宮兄弟」も、この「オタクブーム」的なものに乗っかった映画のひとつだと思います。

オタク要素の排除

そんなオタクブーム真っ只中に作られ、ほかのオタク映画と近いモチーフでありながらどこかシャレた匂いをかもしているのがこの映画のすごいところ。

上手いのは劇中で描かれる「間宮兄弟」の好きなものが「ボードゲーム」「映画」「飛行機の模型」等で、「アニメ」「漫画」「テレビゲーム」「パソコン」「カメラ」「フィギュア」といった秋葉原的なものを絶妙に外してきているところ。服装も清潔感があり、二人ともメガネをかけていないのもポイント。もちろんリュックも背負いません。
かなり意識的に「オタクのトレードマーク」的な要素を排除している感じがします。
つまり「キモくないオタク」という虚構の存在を作り上げている感じがするんですよね。

劇中で彼らを称して「これじゃ間宮兄弟じゃなくてマニア兄弟だな」というセリフがあるんですけどこれがまさに象徴的で「”オタク”という言葉は使わない」という強いメッセージを感じます。

「キモくないオタク」とは

この映画で描かれた「キモくないオタク」の要素を書き出してみます

・強いこだわりを持って打ち込んでいる趣味があるが、それはアニメ・ゲーム・パソコン等ではない
・こだわりが強いが故に几帳面でちゃんとしている
・変わった趣味を持つが基本的に兄弟の中で完結しており他人に迷惑をかけない
・女性を性的に消費するコンテンツ(アダルトビデオ、エロ本など)を嗜好しない
・ギャンブル、風俗などのいかがわしい趣味を持たない
・服装や髪型などが(おしゃれではないものの)清潔である
・定職についており、親に寄生せず経済的に自立している
・炊事・洗濯・掃除等の家事が自力でできる
・親を大事にしており仲が良いが、いわゆるマザコンではなく適切な距離感
・女性に好意を持つこともあるが,過剰に追いかけたり執拗に迫ったりしない。相手に恋人がいることが分かれば素直に引き下がる
・機械に強いので腕時計の電池を替えてくれたりする(無償で)。彼らにとっては簡単なことなので見返りを要求したりしない
・品行方正であり怒ったり声を荒げたり暴力に訴えたりしない。
・変人であるが、第三者として観察する分には面白くて無害な存在である
・他者から奇異なものとして見られることを気にしない

「オタク主人公」映画は「上から目線で見守る」

ところでwikipediaの「電車男」の記事の中にこんな記述がありました

『なんとなく、クリスタル』(1980年代)の感性では読者が作品中での上流階級の生活を見上げる目線で感覚を共有していたのに対し、『電車男』では読者がやや「上から目線」で(童貞・オタクの恋愛弱者である)電車男を見守るという形で一体感を得られるようになっていることを指摘している

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%BB%E8%BB%8A%E7%94%B7

この「上から目線で主人公を見守る」というのが「オタク主人公」映画に共通する雰囲気なのかな、と思いました。

そしてこれは「間宮兄弟」にも当てはまる感じがします。

ちなみに女性主人公のものだと「海月姫(2014)」とかもそんな感じがしますね。

で、結論は?

これだけいろいろ書いておいて目の覚めるような結論とかは無いのですが、「間宮兄弟」は2002〜2008年ぐらいのオタクブームにインスパイアされながらも、オタクの長所だけを抽出してキモい部分を排除したような絶妙なキャラクター像を作り上げることで、万人に愛される映画になっているんじゃないかと思いました!

結局僕が言いたかったことを一言でまとめるとすれば

「間宮兄弟」は巧妙に漂白・脱臭されているが「電車男」と同種の映画だ!

ということかも。