2時間サスペンスが面白い

ここ1年ほどBSで再放送してる2時間サスペンスを観るようにしています。その中で面白かったものを紹介したい。繰り返し録画にしてあるのがフジテレビだけだったので( 「赤い霊柩車」を全話撮ろうとした結果そのまま惰性で録画され続けていた )、偏りがありますがご了承ください。

主人公が警察官のもの

2時間サスペンスをストーリーの性質で2つに分けるとすると、「主人公が警察関係者か否か」というのが大きな分かれ目になってくる気がします。

前者のほうが基本的には硬派で本格的、後者のほうが主人公が一般人な分感情移入はしやすいですが「なんで普通の主婦がそんなに殺人事件に立ち入れるんだよ」というような違和感はどうしても付きまといますしリアリティという意味では落ちるところがあります。
まずは王道である前者、主人公が警察関係者なものを紹介します。

ショカツの女 新宿西署 刑事課強行犯係

片平なぎさ主演。全13回。

やはり見どころはメインキャストの一人である南原清隆(ウッチャンナンチャン)。
意外とナンチャンのアクションシーンが多くてカッコイイです。ガサツだけど情に厚い熱血漢なキャラクターもバッチリ。片平なぎさとのコンビもよい感じ。
「ナンチャンが大活躍する刑事ドラマ」というだけで見れてしまうところがあります。新宿が舞台なのもイイ。

刑事調査官 玉坂みやこ

浅野温子主演。全2回。

割と天真爛漫な役の多い浅野温子が超エリートの刑事調査官というのが珍しい感じがしました。
マイペースな玉坂みやこに振り回されつつも奮闘する相方の田所(渡辺いっけい)が微笑ましくて好きでした。伊集院光がレギュラーで出てたりとか個人的に好感触だったんですけど全2回で終わってしまい残念。

警部補・佐々木丈太郎

寺脇康文主演。全8回。

初回は「警視庁三ツ星刑事 佐々木丈太郎」というタイトルで、「三ツ星」というだけあって料理上手な刑事が料理で事件を解決する感じにしたかったのかな?という内容でした。取り調べで犯人の郷土料理のだんご汁を食わせて自供させるシーンとかありました。

2作目からはグルメ要素は多少残しつつも、もう少しシリアス寄りの硬派な刑事ものになった感じがします。個人的には3作目がグルメとサスペンスのバランスが良くて、チャーハンの話が泣けました。

捜査にばかり熱心で家庭を顧みない古い熱血刑事像を払拭するかの如く、料理も育児もこなし妻や同居の母の機嫌もとる「イクメン」的な刑事像は、今となっては別に珍しくないですけど当時は結構新しかったかも?

所割刑事

船越英一郎&的場浩司主演。全10回。

二人は所轄の生活安全課の所属ですが、地域のパトロールをする中で殺人事件に関わることになっていきます。
刑事課に転属するために奮闘する熱血漢・梢田(的場浩司)と、飄々としながらも暴走気味の梢田を見守り、導き、そしてクライマックスの美味しいところは持っていく斉木係長(船越英一郎)のコンビネーションが楽しいです。やはり各話の最後の、斉木が追い詰めた犯人にしこたま正論を叩きつけるシーンが泣けるし痛快。
「おじさんの説教」という全人類が嫌いなはずのものがドラマのハイライト足りえるのはさすが船越英一郎ですね。
しかし9作目で主人公の二人以外レギュラー俳優陣のほとんどを入れ替える大幅な路線変更がされてしまいました。8作目までのほうが個人的には好きでした!

音の犯罪捜査官 響奈津子

古手川祐子主演。全7回。

科捜研の音響捜査官が主役というところが珍しいシリーズ。ストーリーも全話「音」を題材にした内容になっていて、電話の後ろでわずかに聞こえる環境音から犯人の居場所を特定するとか他のサスペンスでは見ない切り口から事件を解決するので面白いです。1~3作では相方となる刑事役毎回変わっちゃうんですけど村田雄浩に固定されてからのほうが安定感あってよかったです。

火災調査官・紅蓮次郎

船越英一郎主演。全15回。

警察官ではないですが、カテゴライズするならば警察関係者側と言っていいでしょう。15話すべて火災絡みの話という異色のサスペンス。
犯人が事故による火災に見せかけた殺人を犯し、紅蓮次郎は火災調査の過程でその真実を暴いていくという展開になるわけですが、トリックを暴くにあたって実際に「火災実験棟」みたいな部屋で実際にトリックを再願するシーンが興味深いです。
本物の消防署が撮影に協力していることもあり「火事って危ないよね。気を付けようね」 「消防士さんは自らの命を賭して僕たちを守ってくれてるんだよ」という啓蒙ビデオ的な雰囲気が全体に漂っている感じがして、そこは好き嫌いが分かれるかもしれません。
そして本作もやっぱり船越英一郎による迫真の説教シーンが痛快。

主人公が警察官じゃないもの

例えば「普通の主婦が偶然殺人事件を目撃してしまい、事件の謎を暴く!」みたいな感じのもの。主人公が警察官ならいくら殺人事件を解決しても不自然じゃないのですが、警察じゃない人が主人公だとシリーズが続けば続くほど「なんでこの人の周りでだけこんなに殺人が起きるんだ?」 「なんで一般人が何度も殺人事件を解決してるの?」というところがどんどん不自然になっていきます。
なので、特に長期シリーズは、「あくまでフィクションですから!」という潔い開き直りに成功しているものが多いように感じます。名探偵コナンで殺人現場に小学生が居ても誰も突っ込まないみたいな。

赤い霊柩車

片平なぎさ主演。全39回。

とんでもない長寿シリーズだけあって面白いです。主人公が「葬儀屋の女社長」という変化球でこれだけ続いたのもすごいですよね。

1作目から見ていくと大村崑と山村紅葉のコメディ部分がどんどん過剰になっていくのが面白いです。シリーズ後半は良くも悪くもマンネリ化している安心感みたいなものがありました。

婚約者の春彦さん(神田正輝)とは60代になっても「婚約者」同士のまま結婚しないし、東京に住んでいる春彦さんが京都に会いに来た日に限って必ず殺人事件が起きるし…

まさに上記の「なんでこの人の周りでだけこんなに殺人が起きるんだ?」という違和感の塊なんですけど、警察からもいつの間にか「おお、葬儀屋探偵さんのご登場ですか」という扱いだったり良い塩梅ででセルフツッコミがされていて許せてしまいます。

「暖房をつけることで遺体の死亡推定時刻をずらしていたのです!」とか「実は全く同じ間取りの別の部屋だったのです!」というようなトリックの部分にフォーカスされる要素が意外と強いシリーズだった気がします。そこもコナンっぽい。

小京都ミステリー

片平なぎさ&船越英一郎主演。全30回

サスペンスの女王と帝王がタッグを組んだ贅沢なシリーズ。
全国各地にある京都っぽい古い街並みを残す観光地(通称・小京都)をフリーライターとカメラマンが取材に訪れ、なぜか必ず殺人事件に巻き込まれます。
旅行雑誌のための取材という設定なこともあり各地の名所や名物を紹介する観光ガイド的な要素が他のサスペンスより多めで、そこが楽しいシリーズでした。

余談ですが先日友近さんがyoutubeで公開したパロディドラマが本作を模したような感じでしたね

坊ちゃん教授の事件簿

橋爪功主演。全3回。

女子大の日本文学の教授が、名作文学ゆかりの地で名作になぞらえたように起こる殺人事件を解決していきます。
1作目は四国が舞台で題材は「坊ちゃん」、2作目は伊豆が舞台で題材は「伊豆の踊り子」、3作目は岩手が舞台で題材は「銀河鉄道の夜」。
作品の性質上、元の文学作品を読んでたほうが面白いのですが逆に言うと読んでない人は面白さ減退なので長期シリーズ化は難しかったのかも。

ハマの静香は事件がお好き

片平なぎさ主演。全6回。

犯罪者の厚生と自立のために元犯罪者の前科者を雇っている横浜の便利屋さん「猫の手商会」の女社長が主人公。
便利屋としての仕事を請け負う中で事件に巻き込まれていくわけですが、元スリ師の従業員が証拠品をスッて入手したりとか、元泥棒の従業員がピッキングでカギを開けて忍び込んだり金庫を破ったりとかアウトローな事件解決法もアリなところが警察モノにはない躍動感を生んでいます。
比較的コミカルで軽いテイストなので見やすい作品ですがリアリティを求める方はあんまり好きじゃないかも。

推理作家・池加代子

名取裕子主演。全2回。

原作は山村美紗。売れっ子推理作家・池加代子とその娘・梨花が事件を解決する話なんですが、つまり山村美紗・山村紅葉母娘をモデルにしてるんですよ!
山村美紗が生前、「この原作がドラマ化されるときには家政婦のアキ役は紅葉に」と言い残していたというエピソードが泣けます(主役の池加代子役じゃないのも泣ける)。

娘の梨花は山村紅葉がモデルなのでドラマ内でも職業は女優さんで、現実と同じく母親が原作のドラマに出演するのですが「あの子は母親が原作者だからコネで出演してるのよ!」的な山村紅葉が散々言われてきたであろう陰口を言われるシーンなんかもあって驚きました。

山村美紗が、自分たち母娘が客観的にどう見られていると思っているか・どう見られたいか、そして娘とどういう関係でありたかったか、みたいなものがにじみ出ている感じがして面白いです。
確かに地味めな作品ではあったし原作も1冊だけなので仕方ないんですけどもうちょっと続いてほしかったです。

カードGメン・小早川茜

片平なぎさ主演。全8回。

クレジットカードの不正を暴く調査員が主人公。クレジットカード絡みの犯罪しか題材にできないという火災調査官以上にキツい縛りを課せられたシリーズですが面白い。
カード情報の流出などで社内の人間を疑わなければならない場面もあり社内でも陰口を言われたり煙たがられる描写なんかもあって辛いのですが、旦那(小倉久寛)と娘の能天気さに救われることが多いです。そこのバランスが好きですね。「主人公が警察官じゃないもの」の中では比較的シリアスな雰囲気なのが個人的にはイイと思います。